今日はYさんを除いて、珍しくエントの部屋のスタッフがそろっていた日でした。彼らは何か書類を提出しなければならないらしく、昼飯もいつもより遅く12時過ぎにとり、昼休みもそこそこに机に向っていました。私は助成金の申請書類を出し終えて少しほっとして、昨年の仕事の論文を書いていました。それで終わればよかったのですが、...
突然、S君がベトナムの音楽を流し始めました。1曲で終わるのかと思って黙っていましたが、そのまま流し続けたので、「静かにしろ。」と最初は日本語で注意しました。彼には前にも一度注意したことがありました。けれども、「何か言ってるぜ。」って感じのことを言って、まわりもくすくす笑い出したので、今度は英語で、「ストップ ザ ミュージック。アイム スタディイング。」と強く言うと、止めました。一瞬、部屋の中に緊張感が漂いました。
S君が帰るときに、彼を呼びとめて、「俺もSWさんも君に研究者になってほしいから日本に研修に行くのをサポートした。けど、日本で何を学んできたの?誰が音楽聴きながら仕事をしていた?最新の研究機器や機材に驚いたかもしれないけど、研究者にとって一番大事なのはアイデアとモチベーションで、テクニックや機械はその次だ。音楽聴きながら仕事をするのはいい習慣ではない。」と、私の言いたいことを伝えました。けれど、彼にはアイデアとかモチベーションとか、それが仕事とどうかかわるのか、わからないようでした。彼の答えは、「日本にいる間は音楽を聴きながら仕事をしなかった。でもここはベトナムだからベトナム流にやる。ベトナム人は音楽を聴くのが好きで、ストレスが高まると音楽を聴きたくなる。8時間も机に座っているのはベトナム人にとってとてもストレスがかかる。でも、あなたが厭なら、あなたがいる間だけは聴くのをやめる。」という内容でした。
「十年後か二十年後に、君も国際学会で発表するかもしれないんだよ。」という私の話にも、当然だ、という表情でした。日本や欧米から言われたとおり、それをそのまま上から言われたとおりに蚊を採集して、(背後にある学問的な流れや意義について深く考えなくても)そのうち自分の順番が来たら外国に留学させてもらって、博士号をもらえる、くらいにしか頭に思い浮かばないのでしょう。何もわかっていません。
私は衛研に勤め出した頃、音楽をかけて仕事をしていました。でも、じきにやめました。音楽を聴いていると仕事に集中できないし、仕事に集中していると音楽を聴いていないことがわかったからです。それに寮や部活、県の同期の友人知人の話を聞いていると、音楽をかけながら仕事している職場なんてありませんでした。けれど、妻が家を出ていって、どうにかつくばで働くまでの間、千葉大に行くとイヤホンでいつも同じ音楽を聴きながら、日課にしていた統計の勉強に取り掛かりました。そうしないと本当に壊れてしまいそうでした。だから、恋人と別れた人や、家族や親友をなくした人にまでやめろとは言いません。でも、今そんなにつらいことがないなら、ながら仕事、ながら勉強をやめて、少しでも貪欲に集中した方がいい、と本当に言いたいです。
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